自分の感受性くらい

忙しない毎日が続いた。「忙」という字は「心を亡くす」と書くが、字の通り、仕事で忙しくしていると何かを美しいと思う感情も、人の優しさを愛おしく思うことも、簡単に見失ってしまうような気がする。やっとのことで仕事を終えて家に帰ったところで、米を…

「わからない」の先にあるものーー横浜トリエンナーレ「野草:いま、ここで生きてる」2024年3月30日

「わからない」ということと「わかる」ということの間にある無限の宇宙に、目を凝らす。しかしそこにあるのは、いつも茫漠とした暗闇だけだ。どれだけ追いかけた所で、何かを掴み取ることなどできやしない。それは、「わからない」ということと「わかる」と…

「美」を言葉にすることーー大川美術館「コレクターの目」2024年3月23日

ある一枚の絵を前にしてしばらく立ち止まり、食い入るように細部を見つめたり、逆に少し離れてぼんやりした目で全体を眺めたりしながら、ただ時間が過ぎていく。そうした刹那的で、それでいて限りなく充実した時間に抱いた自身の感慨を、言葉にすることはひ…

10分

言葉が言葉を呼ぶように文章を書く、書いてみる、書いてみようと思う、そう思っている、今、何を書こうか、何を書くべきなのかわからない、今、今が過ぎていく、過ぎていく度に今が過去になる、だから過去になる前に今を繋ぎ止めようとする、掴み取ろうとす…

光と翳の夢

暗闇の中に据えられた幾つもの街灯の光が、点ではなく一筋の線となって順繰りに、自身の後方へと流れていく。それを見て僕は「景色が流れている」、あるいは「時間が流れていく」という確かな実感を得るけれど、変わらずそこに在り続ける自分自身の息遣いの…

雲ひとつない青空の向こうに

二度寝から目覚めて、カーテンを開ける。あたたかく穏やかな光が室内に入り込み、僕はその光の中で、自分がいま夢と現実のあいだに立っていることを自覚し、いつまでも夢の中にいたい、という思いと、早く現実に戻らなければ、と焦る思いの両方に蓋をする。…

「現実を超えた現実」と出会い続けるために

現実以上の手触りを持った現実がここにある。 濱口竜介の『ハッピーアワー』『親密さ』といった初期の作品群を観た時に抱いたのは、無理に言葉にしようとすればそんな感慨だった。無駄な説明は排され、登場人物たちが「ただそこに存在している」ことが、スク…

月が近づけば少しはましだろう

何をしていても、無意味に思えてしまうことがある。「結局のところ人生に意味なんてないのだ」という諦念を腹の底に抱えながらも、それでも生きているのだから、大小問わず自分なりの生き甲斐のようなものを見つけ、あるいはそうした生き甲斐を「探す」とい…

作曲に関するあれこれ

今年に入り、久々に作曲をしよう、と不意に思い立って、幾つか断片的で形にならないものを作り続けている。昨年の7月ぐらいから作曲にはほとんど手をつけておらず、それよりも文章を書きたい、という欲求に対して素直に、毎日日記を書き続けてきた。そうし…

パーフェクト・デイズ

年始一本目に観た映画は、ドイツの映画監督・ヴィム・ヴェンダースが日本で撮った、『PERFECT DAYS』という映画だった。俳優・役所広司がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞した話題作で、「THE TOKYO TOILET」という、渋谷区の公共トイレを快適なものに…

「僕」と「世界」の間に

正月から不穏なニュースが続いている。能登半島を震源とした大きな地震が起き、津波があった。羽田空港では着陸した航空機と別の航空機が接触し、炎が上がり、死者が出た。僕はそうした痛ましい報道をテレビ越しに見つめながら、空腹を満たすため一人、コン…

20231231

2023年12月31日(日) 2023年最終日。 一年間、毎日日記を書き続けた。厳密に言うと書くことができなかった日も多々あり、何日か分をまとめて書くようなことも多かったけれど、とりあえず日々思うことを、思うがままにここに書く、という目標は果たすことがで…

20231224-20231230

2023年12月24日(日) 昼に蕎麦を食べ、近場で買い物をした。帰り道に車中で、桑田佳祐「白い恋人たち」を流して熱唱した。別に浮かれているわけではない。街の雰囲気に浮かされているだけだ、と、意味の無い言い訳を並べてみる。 クリスマスイブにどこで何を…

20231217-20231223

2023年12月17日(日) 昼に寿司を食べた。寿司はやっぱり美味いなあ、と、当たり前のことを思う。それから適当に買い物をして、帰りにスタバのメルティ・ホワイト・ピスタチオ・フラペチーノを飲んだ。「ピスタチオ・フラペチーノ」だけでは果たして駄目なのか…

20231210-20231216

2023年12月10日(日) 友人と所沢の古本市に行こうと約束していたが、咳が止まらず断念。体調を崩すと本を買いに行けないし、ろくに本も読めない。 結局映画を観るのも、本を読むのも、身体は動かさないとは言えそれ相応の体力が必要になる。僕らは別に身体や…

20231203-20231209

2023年12月3日(日) 朝起きて、37.0℃。もう熱が上がることはないだろう。とりあえず楽観しておく。 昨日コンビニで買っておいた冷凍の焼きおにぎりを食べる。冷凍食品は偉大だ。ご飯を炊かなくてもおにぎりが食べられるし、焼かなくても焼きおにぎりが食べら…

20231126-20231202

2023年11月26日(日) 朝起きて部屋の掃除をし、それから車に乗って埼玉まで行った。今日も一人で過ごすことが決まっていたから、何をしようか考えあぐねていたけれど、もう都心の人混みは御免だった。どこか人気の無い、静かな場所に行ってゆっくりと本が読み…

20231119-20231125

2023年11月19日(日) 何かを書く、ということは、一体どういうことなのだろうか。 uplink吉祥寺で、イ・チャンドン『ポエトリー アグネスの詩』を観た。終始静かに語られる映画で、観ている間はどうにも話が散漫で取り留めが無く、『オアシス』や『バーニング…

20231112-20231118

2023年11月12日(日) 買い物やら家事やらを終え、さあ、何か書くか、と思って机に向かうも、何も書く気が起きない。色々なことがあって、色々なことを思ったはずなのだが、いざ机に向かうと書き出しの一行が何一つ思い浮かばない。諦めてパソコンを閉じ、ソフ…

20231105-20231111

2023年11月5日(日) 何を書けば良いかわからない時に、「何を書けば良いかわからない」と書く勇気が必要だ。それができれば、やっと本当の意味で、日記を書くことができた、と言えるのだと思う。そうやって自己弁護することしかできないが、僕は本当に今、何…

20231029-20231104

2023年10月29日(日) 久々に会う友人と、大学時代を共に過ごしたキャンパスで落ち合った。 友人は少しだけ、前に会った時よりも大人びて見えた。気のせいだろうか。きっと彼にも、彼なりの苦労があるのだろう、と思って、なんとなく、僕にも僕なりの苦労があ…

20231022-20231028

2023年10月22日(日) 昨日の余韻のまま目が覚めた。 「余韻」という言葉を辞書で引くと、「鐘をついた時などの、あとに残る響き」とある。どうして鐘は後に響きが残るのだろうか、と、なぜか一度も考えたことがなかったことを考えてみると、なるほど、鐘は鐘…

20231015-20231021

2023年10月15日(日) 何もない日曜日。二度寝をして目覚めると、もう10時半を回っていた。急いで洗濯物を干し、昨日の日記を書いた。僕は今を生きながら、昨日のことを書いていた。こうして過去を振り返りながら生きていくしか術はないのか、と、なんとなく思…

20231008-20231014

2023年10月8日(日) 昼過ぎから出掛け、蕎麦屋に行った。今週は平日にも蕎麦を食べたから、週に二回、蕎麦を食べていることになるのだが、仕事の合間を縫って食べる蕎麦と、休日に食べる蕎麦は、僕にとってまるで違う。 味の違いは正直な所よくわからない。チ…

20231001-20231007

2023年10月1日(日) 昼過ぎから出掛け、美味い蕎麦を食べ、コーヒーを飲んだ。それから無印良品に行き、結局何も買わず、スーパーで食材を買い込んで家に帰り、拙い料理をした。それから本を読み、何か大切なことに気付いたような、何にも気付かなかったよう…

20230924-20230930

2023年9月24日(日) たっぷりと寝て目覚め、ラジオを聴きながら溜まった洗濯物を干した。ベランダで柔らかな日差しと涼やかな風を浴びながら、そうか、これで良いのだ、と思った。夢も希望も、自尊心も要らない。ただ健康に、日々の生活の一つ一つを愛おしく…

20230917-20230923

2023年9月17日(日) 青山にあるヨックモックミュージアムに行き、「ピカソのセラミックーモダンに触れる」展を見た。 ピカソの絵は面白い。それは、ピカソの絵がただ「新しさ」のためにのみ描かれていて、絵を見る自分が、その「新しさ」を自分の中に生成する…

20230910-20230916

2023年9月10日(日) 午前中に集中して本を読み、保坂和志『小説の自由』を読み終えた。 保坂和志は難しい、とは言っても言葉選びはものすごくわかりやすいのだが、その単純なわかりやすさと別の次元に立ち上がる何か、が保坂和志の面白さで、その面白さを掴む…

20230903-20230909

2023年9月3日(日) 欲しかった香水を買いに車で渋谷に行って、売り切れていたから日本橋まで足を伸ばし、最終的には無事に買うことができた。 何かが欲しい、どこかに行きたい、何かを食べたい、という欲求は、ただそれをすれば満たされる単純なことのように…

20230827-20230902

2023年8月27日(日) 仕事に行った。 休日出勤のたびに「日曜日なのに仕事か」と思うのだが、結局振休は取るからプラマイゼロだ。それでもいつも「日曜日なのに仕事か」と思う。僕は人混みが嫌いだし、できれば日曜日に休みよりも平日に休みの方が嬉しいのだが…