20230319-20230325

2023年3月19日(日)

 高倉町珈琲店で小説を書いた。それから家に帰ってラジオを聴いて、YouTubeを見て、小説を読んで、また小説を書いた。なんだか現実から逃げているみたいで嫌だな、と思った。本当は毎日、現実から目を逸らさずに生きていたかった。


2023年3月20日(月)

 朝から仕事で都心に行った。疲れ果てた状態で空きっ腹にビールを飲んだらめちゃくちゃに酔ってしまって、全部出した。トイレの鏡に映る自分の顔はひどく情けなくて、自分で自分に引いていた。


2023年3月21日(火)

 死んだように眠ったら、驚くほどスッキリと目覚めた。朝からバンドのミーティングをして、それから神保町に行った。大好きなカレーを食べたら、嫌なことは全部忘れてしまった。なんとなく、自分は間違っていない、と思えた。

 古書店をいくつか回って、1998年に開かれたパウル・クレーの展覧会図録を買った。「喜怒哀楽」と題されたその本の表紙の絵は、自分の情操の全てを包み込んでくれるみたいだった。

 夕方から、ブックカフェで開かれた「ことばのポトラック Vol.17」を聞きに行った。具体的な話から始まり抽象的な話で終わる、哲学に満ちた素晴らしい講演会だった。人生で何かを選び取ったり、決断することに、理由なんていらないのかもしれない。なぜ若者の発想を受け入れ、リベラルなスタンスを貫けるのか、と問われた90歳の農家・野内さんは、そこで淡々と「ただ美を求めているだけだ」と返していた。僕はその言葉を聞いて、背筋を正される思いがした。

 講演会の心地良い余韻に満たされながら、カフェで閉店時間まで小説を書いた。途中で窓の外を眺めながら、僕は、僕が誰かに対して持ち寄ることのできる言葉のポトラックを、ずっと探し続けていたい、と思ったりした。

 

2023年3月22日(水)

 仕事に行った。忙しすぎて、日記を書くことも忘れていた。

 

2023年3月23日(木)

 仕事に行った。忙しすぎて、日記を書くことも忘れていた、ということを思い出した。結局何も書くことはできなかったけれど、思い出しただけ良かった、ということにして寝た。

 

2023年3月24日(金)

 仕事に行った。元気?と聞かれて、元気です!と答えたら、目の下のクマがすごいよ、と笑われた。僕は、元気です、と言いながらも、元気ではないことを心の底では気付いて欲しかったから、結果的には良かったのかもしれないけれど、それなら最初から「元気です!」なんて言わなければ良い話なのに、なんで「元気です!」なんて言ってしまうのだろうか。「元気じゃないです!」と、元気に言った方が、人として気持ち良いよな、という気もする。けれど、結局は元気じゃないのだから、「元気じゃないです!」ということすら元気に言えない気がするから、そう考えるとやっぱり、僕は「元気です!」と答えるしか無かった。

 そうやっていちいち振り返って考えることでしか、自分の言動を肯定したり納得することができない自分に、少しだけ疲れた。

 

2023年3月25日(土)

 死んだように眠って、起きた。目覚めた時に、なんとなく生まれ変わったような気がしたから、やっぱり自分は死んでいたんだな、と思った。それから一日中小説を書いた。