20211229

友達のライブをみに下北沢へ行った。自分達の歌に対して真剣に、誠実に、全力で向かい合う姿は、ステージ上で疑いようもなく輝いていた。数々のライブを共にしてきた戦友は、ライブの途中で「あなたと今を楽しみたいだけなんだ」と叫んでいた。それはきっとあらゆる文脈を飛び越えて発せられた言葉だから、演技や嘘も少なからず含まれているように思えてしまうけれど、その複雑な気持ちを文脈の説明でなく、表情や熱量をもってフロアの客に伝えようという真っ直ぐな覚悟が、とてもうらやましく思えた。ステージから降りた彼らは、今まで通り延々とバカな話をしていた。

 


「お前は良い曲を書くために、幸せになるなよ」という言葉を、愛を持って伝えてくれたライブハウスの店長に、3年ぶりにお会いした。バイトで貯めた少ないお金をバンドに注ぎ込んで、月に何度もライブハウスに通っていたあの頃から考えると、普通に就職をしてお金を稼いで、車を買って、曲作りも放り投げてそれなりに満ち足りた生活を送っている今の自分が何故か後ろめたくて、顔を見せることすら今まで躊躇っていたのだけれど、久々にお会いしたら満面の笑顔で出迎えてくれた。

「幸せになるなよ」と言っていた店長は、「こうして元気でまた会えるだけで幸せだよね」と言って笑っていた。3年ぶりに会う友達とは、「良いお年を」と言って肩を叩き合った。世界は、ただこれだけでやさしさに満ちている。いつもならすぐに捨ててしまうライブハウスの招待チケットを、今日だけはポケットの中で強く握り締めて、ギターも持たずに帰りの小田急線に乗り込んだ今日という日を、ずっと忘れないでいようと思った。