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体調を崩して丸一日寝ていた。おかげで本をたくさん読めた。鷺沢萠「川べりの道」は、何回読んだかわからないほど読んだけれどやっぱりいい小説だ。この小説を読むと、普段生きていても中々気付かない、けれど自分が大切にしている、失くしたくない何かに知らず知らず触れることができる気がする。「何か」というふうに、漠然としか言えないのだ。うまく言葉では言えない、一筋縄ではいかないことが生きていると当たり前のようにたくさんあって、それらがわからないにせよ丁寧に考える機会を小説が与えてくれると言えばいいか。わからない。わからないけどわからないなりに、こんなことをあれこれ考える時間は大切だと、思い続けたい。

 

夕方、喉の痛みと熱が徐々に引いてきたら、それだけでなんとなく前向きになれた。生きていくのは大変だし、あまり意味がないのかもしれない。なら、なんとなく好きなことをのんびりとやるのが一番いいのだ。使命感なんていらない。闘争心もいらない。自己顕示もいらない。自己実現なんてもっと必要ない。本当に必要なのは、何かを好きでいることだけだ。僕はカレーが好きで、本が好きで、空いている電車が好きで、家の布団が好きで、クサい映画が好きで、暑苦しい音楽が好きだ。そして好きな人を、自分を好きでいてくれる人を大切にできれば、それできっと十分なのだ。