表現

ずっと表現者に憧れていた。それ以外の何にも憧れなかった。

「音楽を作りたい」「文章を書きたい」とか、そんな単純なことではなくて、「表現者になりたい」というのが自分の願望の根底にある気がする。それは何というか、自意識が膨らみまくってるわけでもなく、表現することに極端に飢えているわけでもなく、ただ憧れていたからだった。それに応えてくれるのが音楽だったり文学だったり映画だったりした。

作品に救われることが昔からたくさんあった。自我が強いのに人の価値観に左右されやすい自分は、結構簡単に、色んな作品に心を動かされた。

自分が自分を強く持てるほどタフではないことや、全てが不安で仕方ないところが弱さであり、恥ずべきことだと自覚した瞬間に、なぜかそれは隠すべきことではない気がした。と思えたのも、僕が色んな作品を好きになったからだ。隠すのではなくて表現すること。そうして素敵な作品を世に送り出している表現者にこの21年間でたくさん出会った。弱さを強さに変えている表現者たちをたくさん咀嚼して生きてきた。自分も弱くていいんだ、と思っただけではなく同時に、ひどく憧れた。人から見たら、そんなものは怠惰以外の何物でもないんだろうけど、僕は憧れた、本当にそれだけでいいんだと思う。憧れたから、好きだから、したい。それだけが僕を創作に駆り立てる。と言いたい。

レコーディングがあった。本当に自信のある音源ができた。どんなにいい作品ができたと思っても、それを一番いいと思うのが自分だ、という事実は少し悲しい。だけど、僕らはバンドだからその気持ちも共有できる、それがたまらなく嬉しい。明日も元気に生きよう。